佐賀県弁護士会
また,アナフラニール及びドグマチールについて標準的な量が処方さ
れていたこと,テトラミドは眠気を伴う副作用があるために睡眠前一回
の服用にとどめられたこと及び抗うつ作用のあるこれら3種の薬が一度
に処方されたことからすれば,Aのうつ病の症状が軽度であったとはい
えない。
(イ) Aは,平成7年7月28日,Dクリニックを受診したが,その際,
D医師は,Aが「depression」であると診断し,うつ病及びうつ状態に
適応があるアンプリット及びミラドールを処方し,その投薬量も標準的
なものであった(甲10の2)。
また,D医師は,2回目以降の診察に
おいても,Aに対し,うつ病及びうつ状態に適応があるプロチアデン及
びミラドールを処方している。
さらに,Aは,Dクリニックを受診した各期間を通じ,被告における
業務に関係する訴えのほかに,憂うつである,気分がよくない,やる気
がでない,疲れやすい,全身けん怠感がある,朝に体が重い,不安があ
る,睡眠障害がある,食欲が余りないなどとD医師に話をしているが,
これらの愁訴はICD-10のうつ病エピソードに該当するものが多い。
以上のように,Dクリニックにおける受診及び投薬の状況に照らして
も,Aがうつ病にり患していたことは明らかである。
ウうつ病の経過について
平成7年8月から平成13年10月までのAの症状は,以下のとおりで
あり,Aのうつ病は,治癒又は寛解したことはなく,通院が一時的に中断
した後の最初の受診時には,常にAの症状は悪化しており,また,医学的
にも,うつ病が治癒したとみられる状況は全くなかったのであって,Aは,
多かれ少なかれ,継続的にうつ病に苦しむ状態にあったものである。
(ア) Aには,第1次受診期間の最後である平成7年8月8日に,早朝覚
せい,思考運動抑制が見られ,うつ病の症状を抱えたままの状態でしば
らく受診が途絶えることになった。
(イ) 第2次受診期間の最初である平成8年9月21日,Aの経過は,余
りよくない状態であり,睡眠障害,思考運動抑制が見られた。
平成9年3月25日には,特に症状が悪化し,D医師は,Aに対し,
服薬と休養を勧めており,第2次受診期間の最後である同年4月15日
の受診時において変化がないまま,しばらくAの受診が途絶えることに
なった。
(ウ) 第3次受診期間の最初である平成9年9月1日,Aは,薬なしでは
つらい,食欲が余りない旨などを訴え,D医師は,自殺念慮を危ぐし,
Aに対し,自殺念慮が生じたらD医師や家族にいうように指示し,また,
休養を勧めている。
そして,平成9年9月18日,同年10月16日には,Aの経過は安
定したが,D医師は,Aに対し,引き続き服薬をするように指示した。
(エ) 第4次受診期間の最初である平成10年3月2日,Aには自殺念慮
がみられるなど,従前よりうつ病が悪化していたことがうかがわれ,そ
の後,服薬による治療を続けた。
そして,第4次受診期間の最後である
同年11月19日には,Aは,経過に大きな変化がなく,D医師から,
そのまま同様の服薬を続けていくことを指示されたまま,受診が途絶え
ることになった。
(オ) 第5次受診期間の最初である平成12年7月17日,Aには恐怖心
や自殺念慮がみられ,D医師は,自殺の考えをやめられない場合には,
家族あるいはD医師に伝えるように指示し,また,休職を勧めた。
Aは,
団体生命保険に加入する際の告知義務との関係で来院することを我慢し
ていたものである。
Aは,平成12年8月ころには,被告の社内体制の
変革,職場環境の変化について不安を漏らしており,不安感が極度に強
くなった恐怖心の症状がみられるほどにうつ病は増悪した。
その後,A
は,多少落ち着きを取り戻したようだが,平成13年10月ころまで,
症状はさほど変わらない状態であった。