また,平成14年11月21日,Aの状態は悪く,「気分がゆうう つ」,「不活発な感じ」,「全身けん怠感あり」などの評価を医師から 受けている。
(カ) Aは,平成14年11月29日,三重県尾鷲市の海で,入水自殺を 図ったと疑われるが,これは,うつ病の自殺念慮による発作的なものと いうべきである。
そして,Aは,平成14年12月2日にc保守センターでの勤務を開 始すると,ストレスが極限まで達し,同センターに勤務していたRに対 し,「もういっぱいいっぱいですわ。」などと述べており,同月7日に は,朝から食欲がない様子であり,原告Gが仕事のことなどを聞いても ぼんやりしていて,ほとんど返事をせず,同日午後に自殺したが,これ は,うつ病が増悪し自殺念慮が高まったことによるものと理解すべきで ある。
エ被告主張に対する反論
被告は,Aがしばしば受診を中断していることをもって,Aがうつ病 にり患したことがあったとしても,治癒又は寛解した旨を主張する。
しかし,Dクリニックの診療録に,「寛解」という記載がされたこと は一度もない。
また,Aが,勤務時間と診療時間との兼ね合いから,う つ病の状態が改善した時点で受診をやめたと推測することはできるとし ても,治癒したがゆえの受診中断と考えることはできない。
さらに,Aは,平成7年8月9日から平成8年9月20日まで,平成 9年4月16日から同年8月31日まで,同年10月17日から平成1 0年3月1日まで,同年11月20日から平成12年7月16日までの 各受診中断期間において,S病院口腔外科において,抑うつ症状に適応 のあるメイラックスの処方を継続的に受けて服薬していたが,Aは,メ イラックスの服用により上記各受診中断期間中も何とか生活できる状態 を維持することができたものである。
【被告の主張】
ア平成6年11月17日ころにAがうつ病にり患していなかったことにつ いて
(ア) 原告らは,平成6年11月17日ころに,Aがうつ病にり患したと 主張するが,Aは,単なる感情不安定又は気分障害としての抑うつ状態 であったにすぎないというべきである。
すなわち,Aが抑うつ状態を愁訴として,C病院精神科を受診した のは,平成6年11月17日の受診の1回だけであり,その後は原告F が1回だけ治療薬を受取りに行ったにすぎないこと,同病院でのAに対 する処方薬が多種類であったことからすると,同病院の医師はAの症状 について確定的な判断をしていないといえる。
また,平成6年11月3 0日から平成7年7月28日にDクリニックで受診するまでの約8か月 間,Aが医師の診察を受けていないことに照らすと,Aがうつ病にり患 していたとはいえない。
これに対し,原告らは,C病院精神科での受診からDクリニックを受 診するまでの期間について,S病院で処方されていたメイラックスを継 続的に服用していたことにより,何とか生活を維持していた旨を主張す る。
しかし,仮にメイラックスでしのげる程度の症状であれば,それは うつ病とはいえない。
(イ) また,Dクリニックの初診時である平成7年7月28日においても, 診療録表紙の傷病名の欄に「抑うつ状態」と記載されていた(甲10の 1・2丁)にすぎず,「VerlaufからみてDepression」との診療録の記 載(甲10の1・6丁)についても,D医師が,Aの症状からはうつ病 と診断はできないが,AがD医師に対して説明した経過からすればその 可能性も全くないわけではないと考えて記載したにすぎないと考えるの が自然であることからすれば,D医師は,当初うつ病ではなく,抑うつ 状態と診断していたにとどまるといえる。
また,Dクリニックでの処方 についても,アンプリット及びプロチアデンの投薬量が通常よりも少な いこと,プロチアデンはドレスピンを含有するところ,ドレスピンはア ミトリプチシンよりも薬効が弱いと臨床現場において評価されているこ と,及びミラドールは内因性の重傷うつ病の第1選択薬にならないこと からしても,Dクリニックでの初診時のAは,うつ病にり患していたの ではなく,単なる感情不安定としての「抑うつ状態」を示していたもの にすぎず,かつ,その程度も軽微であったというべきである。

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